おねえさんは不思議だねぇ」
「そうですか?私は君の方が不思議だと思いますけど」

今日も今日とて特別やることもなく淡々と過ごしていくだけに思えた日常に訪れた小さな変化。
ヤムライハとの修行を終えたというアラジンがの元を訪ねてきてからおよそ数十分の間にたくさんの話を聞いた。
今日出来るようになったこと、彼の師匠の凄さ、昨日食べた食事について、夜一緒の部屋で寝ていた友人の寝相の悪さなどをそれはそれは楽しそうに話すアラジンをはとても不思議な気持ちで見つめる。

彼はマギという存在なのだという。ルフに愛された子。
見た目は十を過ぎたくらいの幼い子どもの身には酷く不釣り合いな言葉の数々を聞く度に、心のどこかでまるでこの子へ科せられた枷のようであると考えたこともある。
はマギもルフも詳しいことは知らぬし小難しいこともわからなかったが、「つまるところすごい魔法使いなのですね」と言い切ると彼女を保護しているこの国の王はそれはそれは豪快に笑ったのだ。
元々いた世界にそのような者がなかったから聞き慣れぬ言葉であったそれらも、滞在期間の長くなった今では否が応でも彼女の耳に馴染んできた。その程度の期間はこの国に世界にいることになるのだろう。
戻る術もやることもなく過ぎ去っていったたった数ヶ月間ではあるが、そうは言っても何度思い返してもあまりに濃密な時間であったとはつい苦笑してしまう。

「?おねいさん?」
「ああ、すいません。ちょっとした思い出し笑いを、」
「そうなのかい、とても困った顔をしていたように見えたから」
「いえいえ、そんなことはないですよ」

そう言いながら隣に掛けるアラジンに話の続きを促すと、嬉しそうに目を細めて零れ出る嬉しさを隠すこと無く表情に表す姿は、出会って幾ばくも経っていない関係ながらその全身で信頼感を感じさせ、は先程とは違う笑みを浮かべた。