例えばだ。例えばもしかしてくらいには予想していたとはいえ、実際にその事実を目の前につきつけられると人間というのは果たして事前にシュミレーションをしていた対応を本当に取ることが出来るのだろうか。

「キョン君、わたしね、魔法使いなの」









因みに俺は無理だった。このようなことを幼馴染に言われた場合、俺はどう言葉を続けるべきなのか。

「それは…」
「うん。有希ちゃんやみくる先輩、一樹君と同じ。ハルヒちゃんのことに関することだよ」

やっぱり、やっぱりハルヒなのか。いや、何となくだがわかってはいたんだ。大体ハルヒがこのSOS団に普通の人間なんて入れる訳がない。ましてやハルヒ自身が勇んでスカウトしてきたのがこのだ。俺が心優しい幼馴染だけは巻き込むものかと懸命にの存在をひた隠しにしてきたのに、妙なところで鼻が良いのが流石ハルヒと言うべきか、を見つけてきて早々に入団するように脅し…いや言い放ったのだ。人がいいのことだから断らなかったに違いないとそう信じていたが、事実は違ったようだ。こいつも他の団員と同じだったなんて。
そんな鼻の良いハルヒも最初は俺たちの関係は知らなかったようだが。その事実を入団から数日後に知ったハルヒ本人曰く、「キョンにこんな可愛い幼馴染がいるなんてそれこそミステリーもいいところよね!それを見つけちゃう私、流石!」と笑顔で言い切っていたが、俺自身もそう思うのだから否定はしなかった。だが正直なところ、ものすごく悔しいのは事実である。

俺の家の向かいに住み始めて10年。幼馴染としての付き合いが始まったのも10年。まさかその10年もの長きに渡る付き合いがあるが、自身を魔法使いだと言うなんて何の冗談かと一瞬思った。しかし、テーブルを挟んで向かいからこちらを見るの目は真剣そのものだ。こいつは嘘をつく時に相手の目を見ないから、今回の話は嘘ではないと10年間の実績を持って俺は言える。

「ハルヒちゃんのことは好きよ。勿論、私たちの庇護対象であることを除いても」
「その言葉は信じる。お前とは10年も一緒だったんだからな。して、他の奴らはお前のことを知っているのか?」
「えっと、多分皆さん知ってると思うわ。現に古泉君の機関…だっけ?そこから私に接触もあったし。だから、キョン君にもそろそろ言わなきゃなって思って」

だからってこの夕飯時のタイミングはないだろう。しかも不思議なことに親父やお袋、妹には聞こえていないのか、向かい合った俺たちの隣では、何の変哲もない普段通りの食卓が繰り広げられている。

「周囲の環境が私たちに干渉しないように魔法をかけさせてもらったの。大丈夫だよ。おばさんにもおじさんにも妹ちゃんにも無害だから」
「…」
「なーに?そんな口の中にカメムシをいっぱい詰め込んだような顔して」
「なーに?、はないだろう。今まで幼馴染として付き合ってきたやつがそんな突拍子もないことを言い出したんだ。俺にだって色々と思うことはあるさ」
「そういうものなのかなぁ」

そういいながらは夕飯のハンバーグにパクついていた。話の深刻さなど感じさせないような幸せそうな顔をしてモグモグと食べている。そういや、こいつの好物だったな。
聞きたいことは山ほどあるが、まずはこの夕飯を食べてからゆっくりと俺の部屋ででも聞けばいいかと思いながら、俺は眼前でほこほこと湯気をあげて自身を食べてくれとまるで自己主張しているかのようなハンバーグに齧りついた。