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「いた!だき!まっ!」 「はい、どうぞ。ああほら、袖は捲ってからといつも言ってるでしょう」 突然ですが、私は本田さんのご飯が好きだ。煮物におひたし、焼き魚、あとお漬物。今日のお味噌汁はお願いして豆腐とわかめにしてもらった。 お父さんとお母さんがどっちも帰って来ない日は、本田さんの家でご飯を食べるのが気づいたら当たり前になっていた。うちのクラスのサエちゃんに本田さんの家で食べたご飯をこの前言ったら、「それ、うちのおばあちゃん家のご飯と一緒だよ?」って言われたけど、本田さんは男の人だと思うから、「おばあちゃんじゃなくておじいちゃんだよ」って言っておいた。 お箸とお茶碗で塞がってしまった私の手の先、少し長めの袖を本田さんは綺麗に折りたたんで肘まで捲くってくれる。口のご飯を噛みながら反対の腕をはいと出すと「おやおや、困った五年生ですねぇ」と言いながらもきちんと綺麗に折りたたんでくれた。 もう小学生も終わるんだから、こんなこと自分でやればいいってわかってるんだよ。でも私はこうやって本田さんが私のことをしてくるのがすごく嬉しいんだ。アーサーさんとかが来る時はレディってやつをしないといけないから全部自分でするけどね。あの眉毛、縁側でスカートのまま寝てただけですごい怒るからうるさくてヤ! 「さんはお姫様ですねぇ」 「ふおでふあ?」 「ああほらほら、食べ物が入ったままで喋ってはいけませんよ」 「っくう…んっ…ねぇ本田さん、お姫様は怒られないと思う」 「怒ってはいないですよ。"ご指導"してるんです」 そう言って本田さんは鮭を一口口の中へポイッと入れた。 「ああちょっと塩っぱかったですかねぇ」とか言いながらも白いご飯をお口に入れると納得したような顔をしてまた食べ始めた。 「そうだ本田さん、」 大切なことを思い出したのでご飯をさっと飲み込んで本田さんを呼ぶ。 三十回も噛んでないけど四捨五入したらきっと大丈夫。本田さんも許してくれるよ。 「私明日ビーフシチューが食べたいです」 「おやまた随分洒落たものをご所望ですねぇ」 「家庭科の時間でやったの。あ、五年生はね、家庭科で料理もするんだよ。それで今度作るんだけどね、昔ビーフシチューを作ろうとした人が間違ったから肉じゃがが出来た話を聞いたの」 「……………あ、あれですか…」 「全然味違うのにねぇ。何で間違え…どうしたの、ご飯食べないの?」 何故か知らないけどビーフシチューの話をしたら本田さんはとても微妙そうな顔をして箸を置いてから何かをブツブツ言った後に、「正しいビーフシチューのためにはルーを買ってきましょうね!」と言ってから正座をし直した。そして学校から帰ってきたら一緒にスーパーに行く約束をしてくれた。 ラッキー!きっといつものコンビニでジャンプ買うだろうから一緒に肉まん買ってもらお! |