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Q:ドイツ人が性的な話題が苦手であるのは本当であろうか。 「というわけで、ルートヴィッヒ殿、お答えいただきたい」 「な、何が「というわけ」なんだ!!」 至極簡単ではありますが、現状を説明させていただきます。私が上でルートヴィッヒ殿が下。ルートヴィッヒ殿の背の下にはソファー。私の頭上には高い天井。つまり、私がルートヴィッヒ殿の上に乗っているということであります。 何故このような体勢で会話をしているかと申しますと、先日拝見した新聞に独逸の方は性的なお話が苦手だとあったので、是非真偽の程を確かめたいと知人に独逸人がおらぬかと思案していたら、彼の顔が浮かんだのです。更にそう思っていた矢先にソファーで午睡なさっているルートヴィッヒ殿を見つけたことが、私にこのような行動をさせました。「思い立ったが吉日」という言葉はこういう時のためにあった言葉なのでしょうね。 また、仰向けで寝ていた彼の上に跨って乗ったしまったことによって着物が乱れることはこの際考えないでおこうと思きます。全ては真偽の程を確かめるという重要な用件のための微細な犠牲に過ぎませぬ。 「、お前はヤマトナデシコという言葉を知らんのか!?」 「勿論知っております。しかしルートヴィッヒ殿、今日日女子も積極的ではなければならぬと兄が申しておりました。私の知識欲を満たすため、是非お答えいただきたい。あの記事が申していたことは本当で御座いますか?」 菊…! と恨めしそうな顔をして兄の名を呟く彼を見下ろす。 日本人の平均的な身長よりもやや低い私は、ルートヴィッヒ殿と話す時は必ず見上げる形になってしまいますが、今日はその顔が自分よりも下にあるのです。欧米の方は身長に限らず私たちより大きな部分が多いことに関して己の胸に手を当てながら再認識していると、征服感と申しますか物珍しさと申しますか、何とも形容しがたい奇妙な感覚に己が支配されていることに気づきました。そして、まじまじとルートヴィッヒ殿のお顔を見つめていると、頬が少し赤くなった彼がため息混じりに口を開いたのです。 「……だからと言ってこの体勢はないだろう」 「それは、本当にこの手のお話が大の苦手な場合、フェリシアーノ殿のように白旗を振ってお逃げになってしまうかと思いまして」 「俺はイタリア並に情けないのか…!」 「いいえ、私もそこまでは申しておりません。して、ルートヴィッヒ殿、あの記事の申しておることは本当でありますか?」 そう私が問うた後、暫くルートヴィッヒ殿が「うー」だの「あー」だのと唸っておりましたが、 「、一つ言っておきたいが、それは日本人にも言えることではないか?」 と仰いました。つまり、彼は日本人もその手の話題は苦手だろうと言いたいのでしょうか。 「確かに一般的かつ客観的見解の限りにはそうでありますね。私たちの文化は慎みを持つということを大事にします故」 「ならこの体勢は何なんだ!」 「時には大胆であることも必要で御座います」 そう私が言い切ったことでルートヴィッヒ殿の目つきが変わった気がした瞬間、先程まで胸の前に置いていた私の手を引かれたかと思うと、背中に鈍い衝撃がありました。その痛みに咳き込みながら思わず瞑ってしまった目を開けると、眼前にあるのはルートヴィッヒ殿のお顔と天井。あら?天井? 「す、すまん!大丈夫か?」 「いえ、多少痛いですが問題はありません。して、ルートヴィッヒ殿、この体勢と質問との関係はあるのでしょうか?」 「ルートで構わんといつも言っているだろう」 「では、その…ル…ルート殿、質問は」 「あぁ、答えか?仮に苦手だとしても、恋人である女性にあのような体勢をされて何もしないでいられたら、国籍など関係なく人としても問題あるだろう」 「あの、問題であるといいますか、私は是か非だけお答えいただければ」 「それに答えなら言わずとも行為で示すべきかと思ってな」 「え、あのル」 そう続けようとした私の口をルート殿は自分の口で塞いでしまった。 Q:ドイツ人が性的な話題が苦手であるのは本当であろうか。 A:一概に苦手と言っても、それは個人的な違いが生じる問題である。 (そして、彼はその例外であった) |