「ふおおおお!これって…!」
「そんなに感動するもんでもないだろ」

薔薇に囲われた庭の中心に用意されたのは二人のためだけの小さなティーパーティ会場。猫足のテーブルには染み一つない真っ白なクロスがかけられ、白の世界の上に置かれているのはいつぞやにテレビで見た憧れの三段の皿。そしてその皿に鎮座するのは、小さく切られたサンドイッチにスコーン、色とりどりのジャム。隣には白を基調とした花の模様をあしらったティーポットとカップたち。
庭に咲いていたであろう薔薇がテーブルの真ん中でも控えめにその存在をアピールしていた。

しれっとした顔でさも当たり前のように見つめているアーサーだが、にとってはそれはまさに夢が現実になった瞬間―――というよりも、絵に描いた餅が目の前に現れたような、そんな感動を与えていた。
先のやり取りをしながらもそわそわとした様子でテーブルへと視線を向けたり、菓子へと注がれる彼女の熱い視線に気づき、「お掛け下さい、レディ」などと言って椅子を引くと、何とも言えない引き攣った顔をしていた。
何て失礼なやつだ、そう思わなかった訳ではないが、頬を赤く染めながらいそいそと言われるがままに座った彼女を見て、彼は微笑むのであった。







「私、憧れだったんですよー。お姫様みたいじゃないですか」
「…お前がお姫様って柄か?」

主にその食べっぷりにおいて。

「そ、それは言わないお約束です!」

さて、始まった二人だけのティーパーティ。邪魔するものはなく、天気は良好。風もそよそよと気持ちよく、何より用意された菓子と茶をはいたく気に入っていた。
一つ一つを美味しそうに、そして見ている方がいっそ清清しいと感じるほどの食べっぷりを発揮する彼女にアーサーは関心するばかりであった。
見事に図星であったアーサーの言葉には顔を赤くして必死に否定する。その様子があまりにも年頃の娘染みていて、彼は破顔する。

「そんなに気に入ったのか」

スコーンを頬張るへとアーサーは声を投げかける。
視線を向けると頬にはその前に食べていたサンドイッチの名残がついていた気がするが、そんなことを今指摘するのはどうしても適切ではないと感じられた。

「ふぁい!…失礼しました。とても気に入りました、はい」
「今更取り繕おうとしなくていいんだぞ」
「訂正します!アーサーさんの態度以外はバッチリまるっと気に入りました!」

そこでまた彼は笑う。
といると本当に笑うことが多い、とアーサーは思う。彼のよく知る日本人と似ているようで似ていない、自国民の同世代の少女と近いようで近くない。そんな目の前の少女との折角の時間をすぐに終わらせるのは惜しい。そう思うと自然に手はティーポットに伸びており、さも当たり前のように台詞を吐く。

「では、お姫様、お茶のお代わりは?」

くすくすと笑いながらそう問うたアーサーの姿には何ともいえないドキドキ感を感じた。顔が赤い。それは本人も彼も自覚するほどであったが、ここで負けては「大和の女子が廃る!」などと馬鹿なことを考えたは必死に対抗すべく次の言葉を考える。

「……い、いいいいいい頂こうかしら、王子様?」
「そこでどもるなよ、馬鹿」
「うわー、アーサーさん、今の発言で王子度ダウンですよ!」

「王子度って何だよ!」とすかさず突っ込むアーサーにしたり顔の
そしてまた二人の笑い声が庭へと響く。
笑いの絶えないティータイム。彼と彼女の安らかな時間。