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「おい」 「…」 「おい」 「…」 「おい、!風邪引くぞ!」 「は、はいいいいい!答えはわかりませんでしたあああ!」 ソファーに深く持たれかけていた背を勢いよく正し、次いで発したの叫び声に、正面に立って彼女を起こしていたアーサーは「うおっ!?」と何とも情けない声をあげた。 菊がアーサー宅へ用向きがあるとのことで、暇を持て余していたも本日は同行をしていた。着いて早々二人で話し合いがあるとのことで来たはいいがやることはないは、アーサーから簡単な英語の絵本を借りることにした。話し言葉は何故か各国とも通じてはいるが文字はこちらに来るまでに習った日本語と義務教育に毛が生えた程度の英語しか読めていないという事態が起きているためで、どうしてそのようなことになっているのかにも菊にも全くと言っていいほど理由はわからなかったが、一先ず勉強をしておいて損はないだろうと持ち前のポジティブさと適当さでアーサーから絵本を借りた次第だ。 しかし訪問前に鱈腹と昼食を食べ、更にはふかふかのソファーに深く腰掛けて読んでいたためかあっという間には夢の住人へとなっていた。そして冒頭のやり取りへと話は繋がる。 「随分と威勢のいい寝言だったなぁ、」 「そ、そうですかね?」 「で?貸してやった本は少しはページが進んだか?」 何とも気まずそうな顔をした顔に全てを察したアーサーは大きな溜息をついた。そのあまりの大げさな所作にはビクリと肩を動かしながらも己の言い分を伝えるべくグッと顔をアーサーへと向けた。ソファーに腰掛けているためか、普段よりも彼の背を更に高く感じる。 「だって英語って苦手なんですよ。単語が覚えられないし、何より見慣れない文字なんて見てたら誰だって眠たくなりますって」 「それであんなに気持ちよさそうに寝てたって訳か。しかも随分楽しそうな夢を見てたみたいだな。すっごい締りのねぇ顔してたぞ」 その言葉を聞いた瞬間に小さく目を見開くを見て、アーサーは何か嫌な予感を感じた。 「あー、実はあっちにいた頃の夢を見てました」 「なっ…」 「数学の授業中の夢だったんですよ。私数学なんて苦手だったんですけどねぇ」 何でかなぁ、と苦笑ともつかぬ何とも言えない表情で無理矢理口角を上げながら言ったの顔を見て、アーサーはの頭に手を乗せぐしゃぐしゃとその手を動かす。 「ちょ、アーサーさんあの髪の毛がぐしゃぐしゃに…」 「ほんとにお前ってやつは…」 一応苦言は呈したものの聞き入られう様子はない。しかしぎこちないながらも安堵感を感じるその手つきには先程吹っ飛んだはずの睡魔が再来してくる感覚を覚える。抗議のために上げていた顔は恥ずかしさのためか、気づくと目の前の男ではなく床を見つめていた。暫し互いに言葉はなく静かな空間でそのやり取りが行われていたが、ついに睡魔に捕らわれるかと思った瞬間、ぴたりとアーサーの手の動きが止まり、不思議に思ったは彼の顔を見あげる。 「よしっ!本田にも休憩させなきゃなんねーし、ティータイムにでもするか。、お前も一緒に食うぞ」 「え、ほんとですか?わぁ。アーサーさんのとこってスコーンと紅茶だけは美味しいんですよねぇ」 「…てめぇ、素直なのか失礼なのかどっちかにしろよ…」 「それが私の言いところだって本田さんも仰ってましたよ」 先程までの表情はどこへ行ったのか、カラカラと暢気な笑みを浮かべたを見てアーサーはホッと息をついた。 |